実際に犯罪のターゲットになりやすいのは女性や子供など力の弱い者、というのは避けられない事実です。
そんな方の中には、護身術を習得し
いざという時になんとかしたい!という高い意識を持っている方もいらっしゃると思います。
ですが、最近ではその護身術が誰でも簡単に教えることができ、SNSや動画サイトで情報を発信しやすくなったがために
どこから選んだら良いかが難しくなっている現状があるのではないかと感じています。
そんな今回のブログを更新している私も以前はクラヴマガという一時期日本でも密かにブームになったイスラエルの軍隊格闘を教えていました。
また、合気道を実際に会費を払って経験しにいったこともありますし、あらゆる格闘技や武道武術は自分の目と身体で見てきたつもりです。
しかしそんな私が、力の弱い女性がどのように護身術を学べば良いのか、というのは指導者の立場になって初めて葛藤したテーマでした。
そしてクラヴマガという今や護身術で検索すれば上位に出て来る看板を捨て、自分で本当に役立つ護身術を発信しようと決め今日に至ります。
私個人の見解が含まれますが、女性が本当に護身術を学んでいく上での注意点をまとめてみました。
以下は私が実際に痛感した護身術と現実とのギャップをストーリー構成にしたお話です。
現在進行系で護身術を習っている方もこれから習う方も参考にしてみて下さい。
目次
- ○ 護身のテクニックだけでは身を守れない?
- ・足りなかったものとは…
- ・テクニックに依存している
- ○ 習ったはずのテクニックが使えない?
- ・練習はある程度決められた条件がある
- ○ 本当に使ったら過剰防衛になった?
- ・使いどころと使い方を知る
- ○ 注意点まとめ
- ・テクニックのみを過信しない
- ・テクニックだけの練習にならない
- ・法律や護身術を使う場面を知る
- ・筋トレや思考能力も大事
護身のテクニックだけでは身を守れない?
さぁ、あなたは護身術の習い事を探す一人の女性のG子さんだとします。
どこか良いところはないかなと探していたらこんなとこを見つけました。
「本格派護身術〇〇〇」
体験初日からいろんな技術を学び先生も優しく教えてくれて充実した内容、女性も多く、久しぶりに程良く汗をかき、爽快感があり入会することを決めました。
そこから定期的に参加し、ナイフが来たらどのように対処するかや
抱きつかれた場合のエスケープなど日々トレーニングをしていきます。
と、ここまでは本当によくある護身術のジムや教室の流れです。
なにはともあれ筆者自身がそのように教えていた時期があったからです。
しかし教えている身としてどこか矛盾のような、何か引っかかるものを感じていました。
身体をしっかり動かし、楽しみながらテクニックを練習してもらう───
そのことに関しては今も大して差はありませんが
それが本当に生徒さんにとって護身になっているのか?
口コミが人を呼び当時多い時は一度に20人近くのクラスを受け持っていた時期がありました。
その時に生徒さんはよくこう問うのです。
「〇〇されたとしたらどうすればいいですか?先生ならどうしますか?」
もちろん質問の意味は分かりますし、状況に応じて対処法を知ることは良いことです。
しかしながら、その時の生徒さんのほとんどは
“護身術を学んでいるからいざという時に対処する”
という何かをされたらどう対処する、というある種の受け身のマインドに私がしてしまっていたのだと痛感しました。
今思えばそれは非常に危険であると思います。
それは後ほど解説します。
先ほどの女性G子さんの例に戻りましょう。
テクニックだけをなまじずっと練習していただけに、少し自身が着いてきました。
これで万が一何かに巻き込まれても、なんとかなるかも…?!
そんな自信もついてきたある日
G子さんは朝仕事で通勤している電車で痴漢に遭遇しました。
(痴漢だ…)
G子さんはは護身術を習っていることもあり、もし何かあってもきっと対処してみせる!と
意を決して男性の手をつかみ、
「痴漢!変態!」
すると回りの人の協力もあって
その痴漢を捕まえ一緒に駅員に引き渡してくれました。
護身術が与えてくれた自信がこうして痴漢撃退に繋がりました。
数日後いつも通っているクラスの仲間に話そう!と思い意気揚々にこの話をしたら、案の定盛り上がりました。
すると仲間のA子さんも護身術を活かしてこんな経験をしたと話をしてくれました。
ATMの列に並んでお金を引き出していたところ、後ろに並んでいた人がA子さんのお金を持った右手の手首を強い力で掴みそのお金を取ろうとしてきました!
そこで女性はすかさず手首を返し、いつも学んでいる護身術でエスケープ。
するとこの男性はすぐに奪えないと判断したのか慌てて一目散で逃げていきました。
A子さんは護身術を学んで良かったと思い帰って行ったとのことでした。
この話、一見護身術をやっていて良かったと思える場面かと思います。
これのどこが変なのか…?
分からないという方は要注意です。
護身術を中途半端に学んでいる方特有の考え方に陥ってしまっています。
次の項目に行く前に、何か足りないものがないかご自身でも考えてみて下さい。
足りなかったものとは…
この二つの例で良いことは、
護身術(テクニック)を使い自身の生命や財産が守れたことにあります。
形はどうあれ、無事に帰れれば護身術は成功です。
ですが本当の意味での護身術の観点からすると
運が良かったのだろうということが言えます。
もし後ろにいた人間が凶器を持っていたらどうしますか?
痴漢をしていた人間が自暴自棄になり刃物を取り出していたり
はたまたATMで強盗をしようとした男性が手首を掴まずにいきなり後ろから羽交い締めにしていたらどうしますか?
これらは全て事後対処でしかありませんよね。
もしかしたら不利になっていた可能性だってあるわけです。
そうです、足りなかったものは
“周りをちゃんと見ていること”
“周りの情報を捉え行動しているのか”
などなど
テクニック以前のことなのです。
テクニックに依存している
練習熱心な方ほどよくありがちです。
テクニックでなんとかできるというマインドになってしまうと、それ以前の危険を察知したり情報収集をおざなりにし、戦う一歩手前までの状況にすぐになってしまうのです。
これはもしもの時に
常に生きるか死ぬかの瀬戸際にいるようなもので、護身術を学んでいるとするならば危機的状況であると強く認識しなければなりません。
先ほどの痴漢の例では
G子さんの後ろにたまたま偶然にも痴漢がいたと思いますか?
その可能性はもちろんなくはないですが、ターゲットとしてG子さんを選び最初から後ろにその痴漢がいたとは考えませんか?
A子さんがATMを使っていたとき、身につけていたものやサイフのブランドでターゲットとして選ばれ、すでに外にいた時から尾けられ、ATMに並んだ時にはすぐ後ろにつかれていたとしたら、手首を掴まれた瞬間はとても危険ではありませんか?
習ったはずのテクニックが使えない?
G子さんの例に戻りましょう。
G子さんは痴漢撃退も経験し、護身術に更に自信がついてきました。
ある日同僚との飲み会で、G子さんの習い事の護身術の話になりました。
「えー俺にも護身術かけてみてよ!」
仲の良い同僚のM男君がそう良いながら手首を掴んでみます。
するとG子さんはいつもの練習通り手首のホールドを解除して見せました。
すると周りはすごい!と拍手。
G子さんも得意気です。
そこへ同僚でちょっと意地の悪いD太郎さんが
「俺にもやってみてよ」と一言。
G子さんは先ほどと同じように振りほどこうとしますが…全然成功しません。
「あれ…?」
結局取ることはできませんでしたが、空気を読んだ周りの人たちが話を逸らして別のトークになった為、終わりました。
(なんでとれなかったんだろう?)
G子さんはいつも練習では成功しているのに、どうしてあの場でできなかったのか少し疑問に思いましたが、再び練習の時間ではできたので、気にしませんでした。
護身術をならっている方のほとんどがこのことに気付かずに練習しています。
それはどんなことでしょうか?
練習はある程度決められた条件がある
例えば練習では、
ある一定の力でつかんでくれたり
ナイフで突いた後に止まってくれたりと
型を習得させるために一定の条件下で反復練習をさせることもあります。
しかしそれは現実とはギャップがあることに注意しなければなりません。
手首をつかんだ後もしかしたらその動きに合わせて一緒に動いてくるかもしれませんし、相手の握力が80㎏かもしれません。
ナイフで切られたあともすかさず追いかけて切りつけてくるかもしれませんしもう片方の手でつかんでくるかもしれませんよね。
練習の時、相手はあなたが女性だからと手加減してくれていた可能性もあるかもしれません。
そのような時、教室内で動作だけを練習していた場合、現実で想像と違う動きをされると対処ができなくなる可能性があることに注意が必要です。
本当に使ったら過剰防衛になった?
G子さんも護身術の習い事を始めてから早くも1年が経過しました。
そんなある日の夜の帰り道、G子さんは酔っ払ったおじさんに絡まれてしまいます。
軽くあしらっていたらおじさんが逆ギレしてきました。
「調子に乗ってんじゃねぇぞぉ」
着ている服の襟をグッと掴まれました。
G子さんはなんとか振りほどこうとしますが襟を深く持たれてしまいなかなか離れることができません。
男は「謝れ、そしたら許してやるよ!」
といい離しません。
するとG子さんも先ほどより身の危険を感じ
相手の鼻に打撃を入れ、そのまま相手の後頭部を押さえ膝蹴りを男性の急所に入れました。
すると男性はその場にうずくまり動けなくなりました。
いつも練習しているテクニック成功です。
近くの方が110番通報をしていたために、すぐに警察官が到着しました。
男性が一言
「こいつから殴ってきたんだ!傷害だ!」
G子さんの手には血が付いていたため、警察官は事情を聞きます。
G子さんは懸命にあったことを伝えましたが、現場の警察官の判断で一旦警察署で話を聞くということになりG子さんは連れていかれました…。
使いどころと使い方を知る
G子さんは習ったテクニックをしっかりと使いました。
もしかしたら酔っ払いは掴んだあとに何かをしてきたかもしれませんし、さらに激昂していたかもしれません。
自分の命を守ることは成功しましたが、警察に深く事情を聞かれることとなりました。
先の例では、確かに悪いのは酔っ払いの男性だと思うのですが
残念ながら今回女性は過剰防衛になってしまう可能性があります。
なぜ酔っ払いを回避できなかったのかは前の項目でもお話したので割愛しますが
相手をヒートアップさせないようにするには
どの場面なら反撃して良いか、
また自分は抵抗をしていないというアピールを周りにしていたか
法律ではどうなっているか
これらを知らずしてテクニックだけを無闇に使うのは危険なのです。
注意点まとめ
護身術=テクニックでは無いということがお分かり頂けたでしょうか?
テクニックは逃げるため、回避するための方法のひとつであり
実際に身を守るためには
テクニックを使う以前に普段から気をつけるポイントがあり
テクニックを使う場面では自分に非がないように配慮するポイントがあり
テクニックを練習する場所においても気をつけるポイントがある
これらに注意して護身術を学べば、いざという時に対処する力は養われると思います。
また、技術だけでなく筋トレや走ることも大事な護身術の要素です。
そして逃げるためや戦っている時も護身術の世界では思考し続けなければなりません。
判断能力や思考能力を鍛えていくことも大事です。
そういったトレーニングを護身術という習い事を通して学んでいけるのが護身術を習う上での注意点となります。
もし、そういった護身トレーニングしたいと言う方は是非お問い合わせ下さい。
また、遠方の方もどのようなトレーニングをしたら良いかなどできる限りのアドバイスはしたいと思いますので気になる方はご相談下さい。